部下を上手に指導するには<コーチング術>

コーチング術はなぜ必要か

近年、部下や若手の育成ツールとして「コーチング」が着目されています。ビジネスパーソンが扱うべき業務の内容が急速に変化し、上司の経験則で部下を指導することが難しくなっていること、自ら主体的に考えて行動する人材の育成が重要になってきていること、などがその背景にあります。
コーチング技術を企業の管理職研修に活用する動きも進み、中堅以上のビジネスパーソンにとってコーチングの技術は、基本的なスキルに位置づけられつつあります。

コーチングの技法・手法 ~コーチングとは何か~

NPO学習協会代表理事の本間正人氏は、「コーチング入門」の中でコーチングの力点は一人ひとりの内側にある可能性、能力、やるき、自発性、責任感、アイディアなどを引き出すところにあると述べています。

また、(有)ワイズコミュニケーション代表取締役の菅原裕子氏は「コーチング技術」の中で、「コーチングは対象者が自覚していない潜在的な知識やスキルを引き出し、それを智慧に高め、結果に結び付けていく行為」と述べています。コーチングとは、ティーチングのように教え諭すのではなく、新生児の出産を助ける助産師のように、相手の能力を引き出す技術といえます。

コーチングの思考プロセス

コーチングの姿勢として大切なことは、仮にコーチングの相手が仕事上の壁にぶつかっていても、それを乗り越え、自分で解決の手立てを導き出すことができるる力を潜在的に持っているはずである、という前提に立つことです。目標を達成するため、問題解決のため、より高い目標を達成するためなど、コーチングのきっかけはさまざまですが、どのような場合でも基本的な手順があります。

第一に、相手との信頼関係を構築すること、コーチングのテーマおよび目的を共有すること、現状を把握すること、問題を特定すること、目標やゴールを設定すること、目標やゴールに至る道筋を具体化すること、実現の意思・意欲を確認すること、です。

ただし、相手は生身の人間です。相手のパーソナリティーを十分に踏まえ、尊重しながら、臨機応変に対応することも大切です。

コーチングとは、相手とのコミュニケーションのプロセスの中で答えを見つける行為ですので、理論や理屈だけでは十分ではありません。基本的なスキルは頭に詰め込むにせよ、まずは実践でスキルを磨いていくことが望まれます。