交渉上手になるには <交渉術>

なぜ交渉術が必要なのか

人は一人で生きることが出来ない以上、常に誰かと関わりながら毎日の生活を送っています。ビジネスの世界であればなおさらです。自分が所属している組織から与えられた役割や使命を果たすために、私たちはあらゆる局面で交渉を行います。ビジネスにおいては、顧客に対して、上司に対して、常に何らかの交渉ごとを半ば無意識に行っているのが現状です。ビジネスパーソンにとって交渉は基本中の基本のスキルなのです。

交渉術の技法・手法 ~交渉術とは何か~

(有)ヒューマンゼミナール代表取締役の捨田利裕氏は「交渉の技術が面白いほど身につく本」の中で、交渉を「お互いに話し合うことにより、双方にとって納得できる結果に至るまでのプロセス」と捉えています。また、情報コンサルティング会社バーソン・マーステラ社のマネージング・ディレクターである高杉尚孝氏は「交渉のセオリー」の中で、交渉を「お互いの満足度を高める双方向のコミュニケーション・プロセス」と位置づけています。これらの指摘を踏まえると、交渉には単なる「説得」とは異なり、論理性のみならず、感情面のキャッチボールを円滑に行う創造的な面も求められることがわかります。

交渉術の手順

八代英輝著「交渉の論理力」によると、交渉前にすでに勝負は決まっているとのことです。想定問答をシミュレートしておくこと、相手のネガティブな情報を収集しておくこと、待ち合わせ時間には早めに到着しておくことなどです。

テクニックとしては、ジム・トーマス著「パワー交渉術」には、高い要求から始める、相手の最初の提示を受け入れてはならない、より高い地位にある人と交渉すべしなど、基本的な考え方や姿勢、ヒントなどのテクニックが紹介されており、伊藤明氏と内藤誼人氏の共同執筆による「「心理戦」で絶対に負けない本」には、フット・イン・ザ・ドア・テクニック(たとえば、デパート地下の食品売り場で試食を勧められて、つい買わされてしまう)、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(たとえば、「来月必ず返すから100万円貸してほしい」と伝え(無理な要求)、断られたら「では1万円でいいから貸してほしい」(真の要求)と頼む)、ロー・ボール・テクニック(傘を100円で販売。すぐに壊れるため、結局、あまり得にならない)などを含めた心理的なテクニックが紹介されています。

一方、大串亜由美著の「たったひと言っで相手を動かすアサーティブ営業力」には、「この企画、進めても良いですか」と上司に尋ねる代わりに、「新規顧客の開拓と、すでにお付き合いのある顧客への営業活動、重点的に進めたいのはどちらですか?」と二者択一で問うことで期待する返答を得やすくするなど、言葉のちょっとした使い方で、相手にYESと言わせるテクニックが紹介されています。

このように、交渉術には多様なものがありますが、相手への誠意、自分の主張に対する情熱も、これらのテクニックを身につけることと同じくらい大切と思われます。