要領の良い人の仕事の進め方

「分かる」とは「分ける」こと

「分かる」とは「分ける」こと、といわれます。要領のよい人は仕事を進めるに当たり、処理しやすいヴォリュームに仕事を「分割」します。処理しやすいヴォリュームとは、①作業がイメージできる、②進捗を把握しやすい、ということです。大きな塊のままでは途方にくれるような内容でも、小分けにすれば対処する気になるものです。

仕事は積み上げるのではなく「引き算」で考える

仕事は「山登り」に似ている面があります。込み入った長期間を要する仕事に取り掛かっている最中、「今、7合目あたりだろうか。」などとイメージする人は少なくないでしょう。この発想は一見、作業を積み上げることでゴールに到達するイメージのようですが、実はそうではありません。ゴールを想定し、そこから逆算して今いる場所を把握する「引き算」の発想なのです。要領よく仕事を進めるためには、この「引き算」の発想は有効でしょう。第一に、ペースがつかめます。仕事には「納期」がつきものです。堀江恵治氏は「頭のいい人がしている仕事の整理術・改善術」の中で、「そもそも期限を定めない作業は仕事ではない。仕事とは、利益を生み出すための作業なのだ。いつ利益になるのか定まらないような作業は仕事とは呼べない。」と述べ、仕事には必ず期限があるからこそ、期限から逆算してスケジュールを組み立てることを勧めています。足し算の発想ではなく引き算の発想に立てば、成果を出すタイムリミットに対して、何ヶ月あるいは何日余裕があるか、今、残っている仕事の量はどの程度かを測り、今のままで業務を進めて納期までに間に合うかを判断することができます。第二に、業務を進めれば進めるほどプレッシャーが少なくなります。やるべきことが確実に減っていることを実感できるからです。 仮説思考が業務を効率化する 要領の良い仕事をする人は「仮説思考」を多用します。仮説思考とは、「ゴールを仮置きする引き算の発想」の一種です。ただし、仮説思考の欠点は仮説が外れたときに仕事を再度組み立てなおさなければならないリスクを持つことです。したがって、仮説を出す際はこのリスクを加味しておく必要があります。仮説が外れても、これまでの作業を無駄にしたくない、との思いから無理やり先に進むことは厳に慎まなければならない。全ての作業が無駄になるからである。論理的に考え、仮設が間違いと気づいたら即座にその時点でスタートに戻る必要があります。このようなリスクに対処するには、少しでも自分の仮説に自信がなければ、その分、予備の仮説を複数、想定しておくことに他ならない。 最終成果物につながらない仕事を見つけて省略する ・要領の良い人は最終成果物に結びつかない仕事を行なわない、ないし、極力減らそうとします。時間は有限であり、どのビジネスパーソンにも平等に与えられています。したがって、残業をせず、やるべきことをこなす要領の良い人は、中間成果物を生み出すことに価値を置かず、最終的に生み出すべき成果物(商品、サービス)を重視し、その生産に集中します。たとえば中高年向けの旅行商品を開発する企画書を作成する上で市場分析を行なう場合、中高年の余暇活動に関するニーズ分析など、新商品の提案に結びつく市場分析に力点を置き、高齢者の旅行ニーズの分析を行うようなことはしません。時間が有限ということは、もし作業スピードや能力にあまり差がないとしたら、「要領の良さ」とは最終成果物に結びつく時間をどれだけ多く投入できるかの「配分問題」に過ぎないのです。