管理職の労働時間把握は「働き方改革」の一歩
管理職の時間把握が義務に
管理職も労働時間を把握することが、2019年4月から義務化された。
「管理職も労働時間を把握、19年4月から義務化 厚労省」 (2018/7/30 日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33594010Q8A730C1EE8000/
管理職も組織の中で動く賃金労働者である以上、長時間労働の結果、心身を害して人的資本を棄損してしまうことがないよう、労働時間を把握しておくことが経営管理上、重要である。
自らもノルマ達成を求められ、その上で管理業務をも担うプレイングマネージャー(実働部隊となる管理職)、実態としては時間的な裁量に乏しい、いわゆる「名ばかり管理職」なども散見される中で、管理職の労働時間を把握しないのは、ブラック企業が問題を顕在化させないようにする抜け道にしてしまう恐れがある。
管理職の長時間労働と部下の長時間労働との間には、密接な関係がある
管理職の長時間労働と部下の長時間労働との間には、密接な関係がある。たとえは、部下の働きだけでは組織の目標達成に不安がある場合、その達成責任を担わされている管理職に強いプレッシャーがはたらき、その結果、自らがプレイヤーなるケースが考えられる。このような構図が続くと、管理職の長時間労働が固定化する。すると、管理職は自分の部下に気を配る余裕がなくなり、部下業務スキルの向上を支援する助言指導を十分に行えず、仮に非効率な働き方をしていたとしても、それが改善されないため、長時間労働が直らない。負のスパイラルである。
管理職の働き方は組織の健全性を映し出す
一般職の場合、裁量労働などの特殊な働き方でない限り、限度を超えた長時間労働を行わせるのは基本的に法令違反であるが、管理職は時間規制の対象外であるため、人事部門が時間を把握するようにしたからといって、即、働き方に問題のある管理職の状況が変わるわけではない。しかし、何事も「見える化」しなければ問題は明らかにならないし、対策を立てようがない。働き方改革において管理職の労働時間の把握は小さいようだが「重要な一歩」なのである。一般社員の長時間労働がとかく問題になりがちだが、むしろ管理職の長時間労働問題の方が、ある意味根が深く、真剣に取り組むべき事項であるとも言える。なぜなら、それは組織が健全かどうか、業務が効率的な形で回っているのかどうかを占うメルクマールだからである。
社内人材が疲弊せず、持てる能力を最大限に発揮できる状況を作り出すことは、経営にも社員にも意義がある。働き方改革を一時期のブームにしてしまわないようにする必要がある。