「先送り政府ニッポン」の課題5

経済学は「科学」か?

経済学は〝科学〟ではなく宗教ではないかとさえ感じるほど、10人経済学者がいれば10通りの予測があり、本当のところは日本が財政破綻を迎えてしまうのか、誰もわからないのかも知れませんが、私は、未来がどうなるかどころか、日本の財政はすでに破綻していると考えています。その理由は、我が国の税収の10倍の債務を抱え、ギリシャ以上に返済額か膨れ上がっているから、というより、財政規律に対する政府の姿勢と現状の対応の仕方にあります。景気の変動と無関係に定常的に赤字が増えていく構造の改革に、真正面から対処していないのです。

日本の財政法は経常経費を借金で賄うことを禁止しているのに、それができているのは特例公債法を制定し、対処しているためです。(財政法はすでに形骸化しています。)

財政規律を保つよう、健全な状態に戻そうとの意思があるなら、債務額が拡大する方向で政策の舵取りを行うはずはありません。しかるに、景気が良くなれば債務の負担は相対的に軽減するとして、入りと出の差分が広がることを許容しているのが実態です。

「入るを測りて出ずるを制す」

「入るを測りて出ずるを制す」、すなわち歳入額に応じて歳出額を決めるという財政の基本原則は、無視され続けています。

債務とは現在の国民が将来の国民に対して行う借金のことです。とりわけ建設国債に対する赤字国債の額が4倍以上にまで上昇している今日、大部分が将来の国民のための投資などではないこと、未来に得られるであろう血税を前借りし続けている事実を国民に明確に伝え、理解を得るべきではないでしょうか。平成25年8月に閣議了承された中期財政計画においては、今後、平成32年度(2020年度)までに国・地方の基礎的財政収支黒字化を実現することとされています。その後も2020年度のプライマリーバランスの黒字化を訴え続けていますが、それを実現するための説得力ある政策方針は提示されていません。

この計画の前提の経済成長率は名目で3%としていますので、3%を下回れば目標は未達で終わります。そしてこの想定がはたして現実的な値なのかを熟慮する必要があります。2%のインフレ達成はほぼ実現不可能であり、さりとて今の状況では1%を超える実質経済成長率も現実的ではありません。つまりどちらにしても名目3%の達成は不可能に近いのです。

実現させたい未来から逆算して、現実離れした前提を置いているように思えて仕方がありません。

財政悪化を避けられるとして、経済活性化を目的に政府が実施する財政規律を無視した財政出動が、むしろ財政危機を早めるところに、政府の取組における問題の根本があります。