「先送り政府ニッポン」の課題4

「GDP600兆円」を達成できるか?

アベノミクス第2ステージの目標の一つである、2020年までに名目GDP600兆円を達成することはかなり困難です。2015年のGDPは501兆円ですから、2020年に600兆円にするには、年率平均で3.7%の上昇が求められます。

日銀が想定したようには2%のインフレ(1986年~1991年のバブル期でも1.7%のインフレ。近年は平均マイナス0.6%程度。)は生じていないため、この状況が続けば、3.1%程度の実質経済成長が必要という計算になります。しかし、バブル崩壊以降、我が国の実質経済成長率は平均で1%を割り込んでおり、その3倍以上の伸び率で2020年まで経済成長が図られなければ達成できない値です。

実質経済成長率(3.1%)=名目経済成長率(3.7%)+インフレ率(-0.6%)

仮にこのような経済成長が実現した場合、金利上昇リスクが発生します。野口悠紀雄氏は、借り換えは徐々に行われるが、5年程度経てば全残高が新しい金利水準になると指摘しています。

公共政策研究センター理事長の田中直毅氏によると日本の長期金利が1%増えると新発国債と借換債の発行は中長期的に見て年間150兆円を超えるので、国債の利払い費は1.5兆円以上増え、これは軽減税率適用後の消費税率1%程度に相当する、と指摘しています。長期金利が上がり続けると、消費税率も利払い費だけのためにあげ続けなければならなくなる羽目になるといえます。

「詰んだ状態」

逆に、経済がいつまでも拡大しなかった場合はどうでしょうか。日銀の国債大量購入は無限に行えるわけではありませんから、いつか購入を止めることになります。同規模の買い入れを行える機関が現れなければ(まず、現れないでしょう。)、金利が上がり、すでに膨大となっている国債発行にかかる利払い費が増加し、その返済のためにさらに国債の発行額を増やす必要が生じます。

経済が拡大しないと対GDP比の公債残高は小さくならないし、拡大すると利払費が膨れてさらに公債残高が増えます。将棋で言うと「詰んだ状態」といえます。

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