「先送り政府ニッポン」の課題1

日本の財政と社会保障制度はなぜ破綻していると言えるのか

日本の財政は危機的な状況です、またその主因は社会保障にかかる支出の増大です。

 平成27年度の社会保障の決算額は31.4兆円で歳出総額の3分の1を占めており、これは特例公債(赤字公債)28.4兆円とほぼ同規模です。つまり見方によっては、社会保障の分だけ借金をしているといってもよいかもしれません。

 では、他の費目で削れるところはないのでしょうか。支出経費のうち、不交付団体である自治体が財政を維持するには「地方交付税交付金」は大切なお金であり、ゼロにするのは極めて困難です。政府が政策運営を行うための政策経費(公共事業6兆円、文教及び科学振興5.4兆円、防衛5兆円、その他9.5兆円)に加え、借金返済(国債の債務償還、利払い費等)23.5兆円も削減は難しいです。これらを国民の税金で賄っているとした場合、先ほど申し上げたとおり、借金分がそのまま社会保障に充当されているとみなすことも可能です。

自転車操業の財政

 もちろん、お金に色はついていないので、国税と公債金のどちらがどの経費を賄っているかを論じるのは単なる理解の仕方の話であって、あまり意味はないかもしれませんが、支出項目のうち、増加を続けているのが社会保障費と国債費(借金返済)であり、また、収入項目のうち、増加を続けているのが特例公債費(借金)であることを考慮すると、借金で社会保障を行っているとの見方はあながち間違いとはいえません。

 一般会計における歳出総額の3分の一を占める社会保障関係費は、社会保険費、社会福祉費、生活保護費、保健衛生対策費、失業対策費などで構成されますが、そのうち全体の7割以上は年金・医療・介護の保険給付費で占められています。年金、医療、介護3つを合算した社会保険の給付額は高齢者、とくに75歳以上の後期高齢者の人数と相関が高いことから、社会保障関係費と後期高齢者人口の相関は高く、実に社会保障関係費の95%は後期高齢者人口で説明できます。もちろん、公費負担割合や医療や介護のサービス利用者の負担割合などが変わってくれば、実際の費用も異なってきますが、上記の考えに基づき、粗い試算を行うと、今後2050年頃までは増減を繰り返しながら、社会保障関係費は現在の1.5倍の45兆円近くにまで上昇することが予測されます。