「保育園を無償化」したら少子化問題は解決するのか?

少子化対策の効果がなかなか出ない「真の理由」

政府は2019年10月より、幼児教育や保育の無償化を実施する方針を固めました(2018年5月末)。少子化対策の代表施策が、「保育所対策」であることを疑う余地はありません。「保育園落ちた日本死ね!!! 」の投稿が政府の背中を大きく押した面はありますが、保育所対策は少子化問題を解決する最重要テーマとして、20年以上にわたり政府は力を入れてきました。しかし、待機児童対策も無償化も残念ながら少子化を抑制する決定打にはならないでしょう。なぜなら、少子化の主因が別のところにあるためです。

合計特殊出生率を要因分解してみると…

少子化を示すのによく持ち出される指標は、「合計特殊出生率」というものであり、一人の女性が生涯で生む子どもの数を意味しています。戦後ほぼ一貫してこの値は低下しており、近年は少し上昇してきましたが、それでも人口を維持する水準(人口置換水準)の2.07をかなり下回る値です。

合計特殊出生率は、結婚している女性が生む子どもの割合と女性(あるいは男性)が結婚する割合の掛け算で示すことができます。つまり、少子化という現象は、「既婚者が産む子どもの数の低下」と「結婚しない人の割合の増加」の2つの要因に分けられます。ここ40年程度の2つの要因の変化を見てみると、合計特殊出生率を下げる要因としては、1970年代後半以降は一貫して結婚する人の割合の減少、すなわち未婚率の上昇です。

未婚者対策を政府が真剣に考えるべき時期が来ている

むしろ子どもの生む割合は増加しており、合計特殊出生率を上昇させる要因となっているのです。1975年以降は「結婚している世帯から生まれる子どもの割合」は合計特殊出生率を上げる方向に寄与しています。子育て支援策が一定の効果を及ぼしているとも考えられるため、これまでの取り組みが無意味ということにはもちろんならないのですが、出生率を上げようとするなら、アンバランスなほど未婚者対策が軽視されている事実と向き合う必要があります。

未婚者対策は個人の価値観に踏み込む恐れがあり行政が行うのが適切なのか、といった議論はあります。しかし、合計特殊出生率を人口維持水準である2.07以上に短期間に上げようと考えるならば(後に述べる通り、上がる可能性は低いですが。)、子育て家庭への支援に偏った現状の政策方針を見直す必要があるかもしれません。